風雲☆永田町

「政治という仕事は、情熱と判断力の両方を使いながら、堅い板に力をこめて、ゆっくりと穴を開けていく仕事だ」(マックス・ウェーバー)

早期解散論強まる  菅氏の権力志向と弱小野党

 永田町では、早期の衆院解散・総選挙説が広まっている。辞任表明した安倍晋三首相の後継が既定路線になっている菅義偉官房長官が、組閣後すぐにでも衆院を解散し「月13日告示、25日投開票」という具体的な日程も飛び交っている。ベテラン議員が話す。
 「新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行、経済危機などこの先支持率が上がる材料はない。菅氏の自民党総裁任期は来年9月までで、そこで退陣が濃厚だ。菅氏は打って出るしかない」
 菅氏はこれまでテレビ番組で今秋の衆院解散・総選挙の可能性について「なかなか難しい」と語った。コロナの収束が見通せず「国民の声は、とにかくコロナ対策に専念してくれと(いうものだ)」と理由を説明した。しかし昨2日、番記者に解散は難しいかを問われた菅氏は「知らない」とトーンを変えたという。
 解散は首相の求心力を高める伝家の宝刀だ。安倍首相のときは否定したが、自身の首相就任の目が出てきて、これを早々と封印するのは得策ではないとの思いが透けてみえる。一線記者は別の見方も語った。
 「農家出身の菅氏は横浜市議からのたたき上げだ。権力志向で、いつも上と戦ってきた。党内基盤は無派閥菅グループの30人ぐらいと弱い。総裁選では5派閥から支援を受けており、ある程度意向を聞かざるをえない。衆院選で勝利すれば政権に正当性が生まれ、『菅1強』が完成する」
 さらに続けた。
 「菅氏は麻生太郎首相が2008年の就任直後に衆院解散を打とうとしたのを止め、09年衆院選自民党は大惨敗して下野した後悔がある。他方、安倍首相による2度の解散にも慎重だったが、安倍首相は断交して圧勝した。この2つがトラウマとなっており、『勝てるタイミングで選挙をすべきだ』という判断になるだろう」
 今秋は勝てるタイミングといえるか。
 「野党が分裂状態だと自民党は強い、立憲民主党と国民民主党が合流するが、国民民主党の約10人は参加せず新党を作る。連合の組織議員もいて、連合が割れる。日本維新の会やれいわ新選組議席を増やしそうだ。新内閣発足のご祝儀相場で高支持率が期待できる。公明党も『来年の東京都議選から離れている年内ならOKだ』と内々に菅氏や二階俊博自民党幹事長に伝えているし、難色を示しても創価学会に太いパイプを持っている両氏が説得できる」
 解散を先送りする材料はコロナの感染拡大と、大型化している台風の到来ぐらいだろうか。