風雲☆永田町

「政治という仕事は、情熱と判断力の両方を使いながら、堅い板に力をこめて、ゆっくりと穴を開けていく仕事だ」(マックス・ウェーバー)

菅(すが)新政権の目玉デジタル庁  縦割り行政打破・長期政権の装置

 安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選で独走している菅義偉官房長官は、政府のデジタル化を進める司令塔として「デジタル庁」を創設する方針を発表した。新型コロナウイルスの感染で日本の行政のデジタル化が世界の最低レベルであることが浮き彫りになった。現職閣僚の話。
 「中小企業を支える持続化給付金では、初日に大量申請があり、支給まで1ヵ月ほどかかった。国民1人当たり10万円の特別定額給付金もオンラインで不具合があり、画面と紙の申請を見比べるというアナログな作業も発生した。PCR検査の陽性者に関する保健所の情報はファクスでやりとりされていた。これを一気に進める司令塔が必要だ」
 政府のデジタル化は総務省が中心となってやっている。総務畑で育った菅氏は周囲にこう語る。
 「司令塔機能を総務省から取り上げる。専門家の政治家を大臣にする」
 菅氏は最近、かねてからデジタル庁の創設を打ったて来た竹中平蔵総務相と面会し、デジタル庁についてレクチャーを受けた。狙いについて、官邸筋が解説した。
 「菅氏は『縦割り打破や規制改革では国民はピンとこない。だから、デジタル化というキーワードを付けて省庁を横串にせよ』とアドバイスを受けた。縦割り打破にこだわっている菅氏は飛びついた」
 菅氏のお気に入りのエピソードは、政府が今年6月から、発電や農業用などに限って使っていた既存の利水ダムも洪水対策に活用できるよう運用を見直したことだ。大雨の前に事前放流できるようにすることで、水害対策に使うことができるダムの貯水容量は八ツ場ダム50個分に相当するという。菅氏は総裁選でも「縦割りを打破して実現した結果だ」と訴えている。
 担当大臣としては、突破力を期待される河野太郎防衛相や平井卓也元IT担当相らが取りざたされている。いずれにしても、デジタル庁創設に伴いデジタル化が進めば、菅政権のレガシーとなる。ベテラン記者が解説した。
 「ワンポイントといわれた菅氏だが本格政権を狙っている。デジタル庁は1年ではできない。年内に衆院解散・総選挙を行って勝利し、来年の総裁選でも勝つシナリオを持っているのは間違いない」