風雲☆永田町

「政治という仕事は、情熱と判断力の両方を使いながら、堅い板に力をこめて、ゆっくりと穴を開けていく仕事だ」(マックス・ウェーバー)

コロナを利用した倒閣運動 小池百合子都知事が政府に緊急事態宣言「要請」

 菅義偉政権が新型コロナウイルスの感染拡大に苦しんでいる。東京都が昨年12月31日、大晦日に合わせたかのように1日の新規感染者数「100超え」を発表し、年が明け1月2日に西村康稔経済再生担当相を訪ね、緊急事態宣言を出すよう要請した。自民党中堅議員が言う。
 「政局的な動きだ。コロナを利用した倒閣運動ともいえる。政府は都などに飲食店に対し午後8時までの時短営業を要請するよう求めたが小池氏は蹴った。それなのに、緊急事態宣言を出せという。責任は取りたくない、政府の印象を悪くしたい、というパフォーマンスだ」
 都はやるべきことをやる前に、政府に責任転嫁しているという解説である。当初、小池氏と埼玉県の大野元裕知事だけが西村氏を訪れるはずだった。このとき、緊急事態宣言を発令するか問われた政府高官は「そういう流れではない。神奈川県の黒岩祐治知事、千葉県の森田健作知事がいないことをよく考えてほしい」と語っていた。
 大野氏は元民主党参院議員だ。黒岩、森田両氏は首相に近い。野党系知事によるパフォーマンスとの位置づけだった。しかしその後、黒岩、森田両氏も小池氏に同行した。政府関係者が説明する。
 「2日の時点で首相は緊急事態宣言を迷っていた。まずは飲食店の時短営業の言質を取るよう西村氏に支持した。いわば、時短営業を緊急事態宣言の前提にしようとした。バーターと言い換えてもよい。その見通しが立ったので、黒岩、森田氏も同席した」
 4日、全国紙朝刊各紙に「都、全飲食店時まで」の見出しが躍った。その後、首相が念頭会見で1都3県を対象に緊急事態宣言を検討することを明らかにした。昨年春先の緊急事態宣言によって、経済は大きな打撃を受けた。今回は飲食店に限定するなど対象を絞ることで、マイナスを最小限に抑える見通しだ。
 今回の攻防をどうみるか。ベテラン記者は。
 「首相の負けだ。緊急事態宣言を出さなければ感染拡大を放置していると批判され、出せば経済にマイナスとたたかれる。本来は小池氏のコロナ対策失敗のはずが、『政府は後手』との印象をつける結果となった」
 念頭から政府は苦境にある。