風雲☆永田町

「政治という仕事は、情熱と判断力の両方を使いながら、堅い板に力をこめて、ゆっくりと穴を開けていく仕事だ」(マックス・ウェーバー)

閣内からみるポスト菅分析 加藤、武田氏急浮上。細田派と竹下派は分断

 菅義偉首相の閣僚人事からは、「仕事人」という起用理由のほかに、将来的な後継の育成方針が読み取れる。政権の目玉政策を担う閣僚として河野太郎行政改革担当相や武田良太総務相を任命し、自身が首相就任直前まで7年9カ月務めた政権の番頭役は加藤勝信官房長官に託し「ポスト菅」に急浮上させた。複数を競わせて求心力を高めるのは、安倍晋三前首相の手法にも似ている。
 首相は河野氏の突破力や発信力に長く期待を寄せてきた。自民党が野党に転落した平成21年の総裁選で首相は河野氏を支持し、年の第2次安倍政権発足以降は閣僚を歴任させ、菅政権では最重要課題の「縦割り行政の打破」を任せた。
 河野氏麻生派志公会、54人)に所属。領袖である麻生太郎副総理兼財務相と首相は河野氏首相候補に育てる点で利害が一致しており、河野氏は政権の安定にもつながっている。
 「1割程度では改革にならない」。武田氏は18日、携帯電話料金値下げについてこう豪語した。武田氏は総務畑ではないが、親分肌で政策実行力があることから党内では「党の将来の実力者」(閣僚経験者)と目されてきた。所属する二階派志帥会、47人)には首相候補がいないだけに、実績を残せば武田氏が躍り出る可能性がある。
 加藤氏は再浮上の機会を得た。加藤氏は安倍前首相の最側近のひとりで、党四役である総務会長などの経験を積み「ポスト安倍」にも数えられた。しかし、発信力に乏しいため知名度が上がらず、厚生労働相としては新型コロナウイルス対応が批判され後退した。
 今回、加藤氏が官房長官に抜擢されたことで露出の機会は否応なく増える。所属する竹下派平成研究会、54人)会長の竹下亘元総務会長は「このポストを一つのジャンプ台に、次へ次へとジャンプするよう期待する」と語った。「次」は首相を指すとみられる。ただ、同派内では茂木敏充外相を推す意見もあり、波乱含みだ。
 小泉進次郎環境相は、就任直後は発言が「ポエム」と批判され調整力にも疑問符が付いた。再任には「追試の意味合いがある」(政府関係者)という。
 最大派閥の細田派(清和政策研究会、98人)は複雑だ。後見人にあたる森喜朗元首相は西村康稔経済再生担当相と萩生田光一文部科学相を「次のリーダー候補」と位置付けている。しかし、下村博文政調会長稲田朋美元防衛相が今回の総裁選への出馬に意欲をみせるなど乱立気味だ。
 細田派は党幹事長か官房長官という党と政府の金庫を握るポストを得られなかったことも痛手だ。一枚岩になれなければ最大派閥のメリットは失われるだけに、同派幹部は「菅政権の間に衆目の一致する候補が育つ必要がある」と危機感をあらわにした。
 岸田文雄政調会長は第2次安倍政権以降初めて、党役員・閣僚から外れた。地方や岸田派(宏池会、47人)以外の国会議員に支持を広げられるかが課題となっている。石破茂元幹事長は、総裁選で強いとされた都道府県連票で首相の半分以下となり、国会議員票が票にとどまり最下位だったことから、厳しい立場にある。石破派(水月会、19人)内には派閥解散論もくすぶり始めている。