風雲☆永田町

「政治という仕事は、情熱と判断力の両方を使いながら、堅い板に力をこめて、ゆっくりと穴を開けていく仕事だ」(マックス・ウェーバー)

「令和太閤」の誕生 「ポスト安倍」菅義偉官房長官に雪崩

 安倍晋三首相が8月28日に辞任を表明し、後任の自民党総裁を選ぶ「ポスト安倍」政局となった。安倍政権の7年8カ月を女房役として支えてきた菅義偉官房長官が大本命となっている。ベテラン記者の話。
 「表向きは安倍政権の新型コロナウイルス対策の継続だが、主流派の権力維持の意味合いが強い。特に続投を目指す二階俊博幹事長が森山裕国対委員長と組んでいち早く支持を訴え、麻生派細田派も菅氏支持で乗り、流れは決まった」
 今回の総裁選は「特に緊急を要する」として党大会に代わる両院議員総会で行われる方向だ。党所属国会議員が1票ずつの394票、都道府県連の代表3票ずつの141票、計535票で決まる。細田派(98人)、麻生派(54人)、二階派(47人)、石原派(11人)無派閥の菅グループ約30人は菅氏を支持し、竹下派(54人)が出遅れている。
 菅氏は秋田県の農家出身。高校を卒業後、集団就職で上京し段ボール工場に勤務した。働きながら法政大学の夜間部で学び、小此木彦三郎衆院議員秘書横浜市議を経て1996年の衆院選で初当選し、現在8期目。官房長官として新元号令和を発表したことから「令和おじさん」として知名度がある。田中角栄元首相は「今太閤」といわれたが、菅氏は「令和太閤」ともいえる経歴だ。
 なぜ、菅氏に雪崩を打ったのか。二階派所属議員が解説した。
 「首相は6月に人間ドックを受け、7月から体調が悪化した。時期を一にして、菅氏がテレビに出まくり露出が増え、首相が雑誌で後継として『菅氏もありうる』。と言い出した。明らかに菅首相への地ならしだった。首相の意中の後継者は菅氏だと敏感に察知し、動いた。議員秘書和歌山県議を経た二階氏は同じたたき上げの菅氏にシンパシーがあるというが、それは口実だ」
 割を食ったのが、岸田文雄政調会長だ。首相の「禅譲」や首相の盟友である麻生太郎副総理兼財務相の支援期待していた。しかし、首相が辞意を固めた8月28日に新潟に出張する「政局音痴」を露呈。8月31日にも総裁選での支援を要請したが、首相は「個人名はいえない」と拒否した。首相周辺は話す。
 「首相は長年仕えてくれた菅氏に恩義を感じている。岸田氏は首相や麻生氏と不倶戴天の間柄にある古賀誠元幹事長の影響下にあるのもネックだ。来年にも総裁選がある。今回は石破茂元幹事長を上回って2位に入り、政治生命をつないでもらいたい」